エンゲージリングのサイズを聞きたいと直接言ってくれれば、私も素直に計って教えるのですが、どうも彼はそれを聞かずになんとかしたいようです。でもこれは思い過ごしと言う可能性もあります。私が日頃から中指にしている指輪のサイズを聞いて来たり、指輪サイズはどう計るのかなどと聞いて来るのが、必ずしもエンゲージリングに直結するわけではありません。それにしても、私は彼がエンゲージリングを渡して来たらどう反応するのでしょう。
エンゲージリングを贈るというのは結婚するということ。今まで5年間うまくやってきましたが、そのまま結婚してさらに何十年もうまくやって行けるものなのでしょうか。前世で捨てられた記憶が、私に重くのしかかっています。でも考えてみたら前世の彼と今の彼はちょっと性格が違います。前世ではもともとこんなに優しくなかった。彼の心にももしかしたら罪の意識があるのでしょうか。そうは言ってもときどき、前世と同じように無責任な面も感じます。でもこんな風に前世にとらわれているのは不健康ですね。
エンゲージリングといえば、例の前世における悪徳先生からもらったエンゲージリングもどきは、ネックレスとして使うことにしました。その指輪のネックレスを最近初めて彼の前でしたときに、彼がどうしたのかと聞いて来たので、とりあえず誤摩化しました。昔イケイケの女子大生をやっていたときに、優しいおじさんからもらったのだと。今更指輪として付けるつもりはないけれど、もったいないからこうしてネックレスにしていると言ったのです。
「エンゲージリングってダイヤが多いんだってね。」 彼はそのダイヤの指輪を見ながらそうつぶやきました。私は何喰わぬ顔で「へー、そうなんだ。」と言います。すると彼はこう続けました。「ダイヤって好き?」 正直言って私は特に宝石に思い入れはありません。特にダイヤのような高価なものにお金をかける人を見ていると、もったいないという気がして来ます。でも彼が選んでくれるとなれば別です。それはさすがに受け取るでしょう。前世の因縁はあるものの、いつまでもそんなものにこだわっていてはいけません。そんなことを考えながら私はついこんなことを言ってしまいました。
「エンゲージリングは、あなたが選んでくれた宝石なら何でもいいわ。」