「エンゲージリングは、あなたが選んでくれた宝石なら何でもいいわ。」 私はそう言ってから、しまったと思っていました。これではまるでプロポーズです。さっきまでプロポーズされたら受けようかどうしようかと考えていたのが、いつの間にかこちらからプロポーズしたみたいな形になっています。彼もどう反応したらいいのか困っているようです。でもそんな風に黙っている彼を見ていたら、途端に不安になって来ました。この人は自分と結婚してくれるのでしょうか。
エンゲージリングを勝手に期待している私が馬鹿だったのかもしれません。私は恥ずかしくなって、こう言って誤摩化しました。「ヤだ。マジになんないでよ。例えばの話よ。例えば。」 その後、しばらく沈黙が流れた後で、彼は一つのケースを取り出しました。そして、それを開けながらこう言ったのです。「君の誕生石ってサファイアだよね。」 そこには原石だけが入っていて、リングがついていません。「えっ、でもこれ…」 私が言いよどんでいると彼はこう言って来たのです。「この石でエンゲージリングを作ったら、受け取ってくれる?」
エンゲージリングを渡されるとしたら、私はてっきり加工済みの指輪を、くさい言葉とともに渡されるのだろうと思っていました。でもこの言葉は卑怯です。私は心をわしづかみにされてしまいました。前世のしがらみもすっかり忘れて、私はこう聞いていました。「私でいいの?」
エンゲージリングのリング部分は、後日宝石店に一緒に行って、そこでぴったりのサイズを作ってもらいました。後で彼にトータル価格を聞いたのですが、それは絶対教えてくれようとしません。そこである日、私は1人でその宝石店に行き、値段を聞いてみました。しかし店員は「それは私が言うことではありません。それに、そう言った値段よりも、エンゲージリングにこもった彼の気持ちの方を大切にしてあげてください。」と言って教えてくれませんでした。
エンゲージリングの値段にこだわっているわけではないのですが、お金のない彼がどれだけ出したかによって、どれだけ彼が真剣なのかを計りたかったのかもしれません。何せ、過去に一度私を捨てた人ですから。ただし、前世での話ですけれど。今回の結婚はうまく行って欲しいものです。